7月のこと。

うさぎ

2019年10月23日 15:15




奇しくも私の誕生日に、がんの告知を受けた父。
そのわりには、かなり落ち着いているし、のんびりしている。
なんでだろう?

ふと思い出すのは、父が定年を迎える年の春のこと。
調剤薬局での待ち時間に低血糖で倒れたことがあった。
そのまま入院することになり、入院する際の検査で肝臓がんと言われたのだった。

その時は、入院していた病院の院長先生にカルテを投げつけられながらも
「父の会社が提携している病院でセカンドオピニオンを希望します。」と言って、父を転院させたのだった。

転院後の国立病院での検査の結果はがんではなかった。

そういった経緯があるので、今回もがんではないと思っているらしい。
私も、そう願っていた。
今回のNクリニックの院長先生もぼんくらであってほしいと。

でも、あれから18年。
生まれたばかりの子が高校3年生になるほどの月日が流れている。


その後、何度かNクリニックに付き添い、本当にがんなのか?
原発はどこなのか?
Nクリニックで受けられる限りの検査を受けた。

やはり、肝臓のがんであろうこと。
肺にも転移しているとのこと。
膵臓にも転移しているかもしれないこと。
自分の診断が間違っていないか、大病院で確認してくるようにと言う院長先生。
これ以上は、こちらでは診られないのだろう。

どこがいい?と3~4の大病院から選ばせてくれたけど、最初から父も私も国立病院に決めていた。
「今は珍しくて、今後増えてくると言われてるがんやから、国立に紹介したら、みんながやりたがると思うわ。」と、なんと配慮のかけらもない言葉と診療情報提供書いわゆる紹介状をいただいた。

おまけに「ステージ4、ステージ4」と繰り返した。
父の表情を見ると、聞こえていなかったようでホッとした。
本人の前で、そんな大事なこと、ケロッと言わないでほしい。

この院長の態度には、何度も不愉快になったし、不信感が募る。
テレビに出たり、本を書いたりして、有名な先生なんだろうけど、有名=「名医」ではない。
デリカシーに欠ける。
がんの診断をつけるのなら、緩和ケアの勉強をしてほしい。

7月26日(金)
Nクリニックより紹介された国立病院初診。

診療情報提供書と当日の検査で、ほぼほぼ肝臓を原発とするがんであると診断された。
CTの検査をしたいけど、外来でCTの予約を待つと1ヶ月くらいかかるから、入院して検査しましょうと言われた。

国立病院の先生にがんと診断されたことで、父は自分の身になにが起こっているかを認識した。
そして、落ち込んでいく。

7月30日(火)
父、入院。
入院した日から検査が始まっていた。

翌日には、主治医の先生より父と私が呼び出され、現状の説明を受けた。
腫瘍マーカーの数値は振り切っていた。
どの検査の結果を見ても、画像を見ても、間違いなくがんだ。

カンファレンスルームから先に父が出て行ったので、主治医に確認する。
「あとどれくらい?」
「このままだとあと1年もつかどうか・・・。」
「でも、それを少しでも長くするために、お父さんがしんどい思いをできるだけなさらないように、これから一緒に頑張りますので」と。
やっぱり、緩和ケアを勉強している先生は違うなぁと変なところで感心した。

慣れない入院生活で父は眠れているだろうか。
普段から眠剤が手放せないのに。

父がいない家は寂しい。
すぐ帰ってくる。じいちゃんはすぐに帰ってくるよ。
と、小太郎に、そして自分に言い聞かせる。


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